一貫した情報発信を助ける「インナーペルソナ」とは?ブランドの世界観を統一するガイドラインの作り方

2022.11.8

「メディアごとにクリエイティブのトンマナが異なり、ブランドの世界観がブレている」
「統一しようにも、何をどう決めたらいいのか分からない」
「自分たちのブランドらしさとは何なのか。どう言語化すればいいのか」

Webサイト、SNS、広告など生活者が触れるメディアの多様化に伴い、複数のメディアを活用して発信する企業から、こうした相談を受ける機会が増えました。

メディアごとの特性やユーザーの属性を考慮した運用戦略を立てるのは重要な一方、そこに引っ張られすぎると、各メディアのトンマナにズレが生じやすくなります。メディアごとに運用の担当者が違う、外部のパートナーが関わっているなど、関係者の間で「ブランドらしさ」の認識がブレやすい状況下なら、なおさらトンマナを安定させるのは難しいでしょう。

運用に関わるメンバーが「ブランドらしさ」の認識をそろえ、一貫性のある情報発信をするためにはどうすればいいのか? ソリューションの一つとして、IDENTITYは「コミュニケーションガイドライン」の策定に伴走しています。

コミュニケーションガイドラインとは何か。なぜ重要なのか。どのように作っていくのか。IDENTITYがクライアントと実践している内容をまとめてみました。

世界観の統一した情報発信が大切な理由とは

そもそも、メディアごとにクリエイティブのトンマナが安定せず、ブランドの世界観がブレると何が問題なのでしょう?

例えば、自社がオウンドメディア・Twitter・Instagramを運用している場合。ユーザーがTwitterの投稿をきっかけに、自社のブランドに関心を持ったとします。

このとき、それぞれのメディアに共通した世界観や戦略がなければ、ユーザーがオウンドメディアやInstagramに触れる機会があっても、「あのブランドだ!」と気づかなかったり、コンテンツに興味が湧きづらかったりします。

メディアごとに「ユーザーがコンテンツに求めること(コンテンツへの期待値)」も異なるため、「オウンドメディアの記事をSNSで投稿したときにエンゲージメントが下がる」「Twitterのフォロワーは増えたけど実際のビジネスにはつながっていない」といった事態にもつながりやすいでしょう。

この状況を改善するためには、メディアのクリエイティブやテキストのトンマナをそろえる(または意図的に外す)ための基本的なルールやイメージが必要です。これらをまとめたものを「コミュニケーションガイドライン」と呼んでいます。

コミュニケーションガイドラインを定めることで、関係者の間で「ユーザーの仮説」の認識を揃え、どのメディアでも一貫した戦略をもとにコミュニケーションを設計する。その結果、ユーザーが「いつ」「どこで」「どの」メディアに触れても自社のブランドらしさを感じられ、自社の世界観に共感するユーザーとの接点を深める効果も期待できます。

どのようにガイドラインを策定するのか?

では、コミュニケーションガイドラインはどのように策定していくのか? IDENTITYが提案しているプロセスは以下の通りです。

  1. 課題を抽出し、仮説を立てる
  2. ワークショップの実施
  3. ガイドラインにまとめる

これら3つのステップを約3ヶ月かけて実施します。ここからは、各ステップにおける具体的な手法をご紹介します。

課題を抽出し、仮説を立てる

はじめに、メディア運営の現状と理想を整理し、ディスカッションの土台を作ります。メディアごとに課題感やKPIが異なる場合、前提の認識がズレたままでは、のちの話し合いがスムーズに進まないことも。IDENTITYを含め関係者全員の足並みを揃えるためにも、まずはメディア運営の現在地と目的地を確認し合うことが大切です。

「各メディアは誰に何を届けたいのか、その理由は?」「そもそも、ブランド全体としてユーザーに届けたい価値は何なのか?」

各メディアの担当者にヒアリングを行い、現在の戦略やKPI、課題感などを抽出。各メディアの定量データや、ユーザーインタビューなどの定性データを参考に、ユーザーが各メディアに求める要素を予想していきます。

ワークショップの実施

次は、コミュニケーションガイドライン策定の要となるワークショップの実施です。ここでは各メディアの担当者の間で「インナーペルソナ」を定義し、「自社ブランドらしさ」の大きな方向性や世界観を横断的に共有します。

まずは、各メディアの担当者が理想とするインナーペルソナを各自で考えます。

インナーペルソナとは、ブランドを代表する身近な「中の人」のこと。従来のペルソナは年齢や性別などの属性でターゲットを限定していたのに対し、インナーペルソナはブランドの世界観に共感するユーザーをターゲットと考え、市場を広く捉えます。

例えば、ペルソナAさんの設定を「20代・女性・既婚・子ども2人・北欧家具がすき」とした場合。従来のペルソナでは、コンテンツや施策を検討するときに「Aさんが好きな企画は何か?」「Aさんが興味を持ちそうなテーマは?」と考えるため、Aさんと似たような属性以外のユーザーは関心を持ちづらいコンテンツになりがちです。

一方、インナーペルソナでは、「Aさんだったら、こういう言い方をするよね」「Aさんだったら、こんな雰囲気の投稿をするのでは?」と、Aさんをターゲットとしてではなく、発信者の視点で活用します。結果、生まれたコンテンツは属性に限らず、Aさんが好む世界観に惹かれるユーザーに広く興味を持ってもらえる……という考え方です。

ワークシートの内容に沿って、インナーペルソナの人物像を固めていきます。

インナーペルソナの人物像が見えてきたら、その人格を表現するブランドらしいビジュアルイメージを集めた「ムードボード」も作成します。

Pinterestなどで画像を検索しながら、ブランドのイメージに合っていると感じる画像は「YES」に、イメージに近いけど何か違うと感じる画像は「NO」に分類します。

インナーペルソナ、ムードボードが完成したら、担当者それぞれの案を発表しながら、互いに共通するキーワードやイメージを抽出。議論しながら一つの案に集約していきます。

まとまった案をもとに、最後は「自社のブランドらしい・らしくないコンテンツの選定」を行います。過去に投稿したコンテンツから、インナーペルソナらしく、ムードボードのYESに当てはまるようなものと、そうでないものを分類。

客観的な視点で過去のコンテンツを振り返りながら、「自社のブランドらしい世界観」の認識を運営メンバー同士で確かめ合います。

ガイドラインにまとめる

最後はワークショップで話し合ったことを振り返り、IDENTITY主導で言語化を進め、コミュニケーションガイドラインの形にまとめていきます。

<企画時のチェックリスト>

ワークショップで共有し合った「ブランドらしさ」から外れないように、コンテンツの企画時に留意すべき点をまとめたチェックリストです。

ブランドのトーンだけでなく、戦略的観点からも確認しておくべき要素を整理し、ジェンダーや宗教など倫理的観点からも項目を考えます。

<企画・コンテンツの方向性>

企画の際に意識することや、コンテンツの方向性をまとめた資料です。過去のコンテンツも参照しながら、企画のキーワードになりそうなものを複数ピックアップしてまとめます。

<クリエイティブにおける「やらないこと」を定義>

ワークショップで共有し合ったムードボードをもとに、クリエイティブ(テキストや写真、デザイン)の観点から「やらないこと」を定義します。「やること」を定義すると施策の幅が狭まる一方、「やらないこと」を決めることでトンマナは安定させつつ、媒体に合った表現の余白は残せるため、伸び伸びとしたコンテンツづくりが期待できます。

「作って終わり」にしないために

一番大切なのは、コミュニケーションガイドラインを作りっぱなしにしないこと。ガイドラインに則ったメディア運用を安定させるために、IDENTITYは策定後も以下3つの観点から四半期に一度は振り返りをしています。

  • ガイドラインの内容がコンテンツに反映されているか
  • KPIは伸びているか
  • 自分たちが目指すブランドの価値をユーザーに届けられているか

アンケートやインタビューなどでユーザーの声を拾いながら、会社を取り巻く環境の変化に応じて柔軟にガイドラインをアップデートする。そんな風に自信を持って取り組んでいただける未来を目指し、IDENTITYは伴走していきます。

本記事で紹介した「コミュニケーションガイドラインのサンプル資料」は、無料で配布しております。こちらのフォームより、お気軽にお問い合わせください。