小さく試して顧客に愛される商品を生む。リアルプロダクトのリーンな製品開発

小さく試して顧客に愛される商品を生む。リアルプロダクトのリーンな製品開発
2022.12.7

開発工程から無駄をなくし、低コスト・短期間で顧客のニーズに応える製品をつくる。IDENTITYでは、リアルプロダクトを扱う自社のブランドにおいて、「リーン開発」と呼ばれる手法を用いた製品開発をしばしば行っています。

リーン開発とは具体的に何か、混同されやすい「アジャイル開発」との違いは? リアルプロダクトの製品開発の手法として、リーン開発を採用している理由は?

IDENTITYが自社ブランドで実践しているリーン開発のプロセスを紹介しながら、同手法において最も意識すべきだと考えているポイントをお伝えします。

なぜ「リーン開発」なのか?

「リーン(Lean)」とは、「(ぜい肉が取れて)痩せた」「無駄のない」という意味。冒頭にも書いた通り、リーン開発とは「開発工程から無駄を削ぎ落とした開発手法」です。

同手法の目的は、自分たちのアイデアが市場や顧客に受け入れられるかを検証すること。その過程において必要最小限のコストで製品を提供し、顧客の意見をもとに改善しながら顧客満足度を高めていきます

一方、混同されやすい言葉に「アジャイル開発」があります。「なるべく簡単な方法で、スピーディに課題解決案をテストする」という考え方は共通していますが、目的は製品の利用価値の検証。つまり、顧客がすぐに使用して価値を感じられる実用的な製品かどうかを確かめることです。

この過程において、小単位での検証と改善を繰り返し、より質の高い製品を開発します。

スタートアップ企業を中心に、ビジネス的課題や生活者ニーズの仮説検証のために生み出されたリーン開発。対してアジャイル開発は、ソフトウェアエンジニアを中心に、エンジニアリングにまつわる課題を解決するために生み出された手法です。

リーン開発で生み出されるアウトプットは、製品・サービスのWebサイトやオンライン広告などの「Webプロダクト」が一般的です。ではなぜ、IDENTITYは「リアルプロダクト」の製品開発に、リーン開発を採用しているのか?

Webサイトやアプリなど、オンラインのプロダクトに比べ、リアルプロダクトは一回の開発や改善にかかる費用や時間のコストがかさみがちです。そのため、小単位での検証と改善を繰り返すアジャイル開発では、失敗した時のリスクが大きくなってしまう

また、現代は環境の変化が激しく、生活者のニーズや求められるモノの移り変わるスピードが早まっています。IDENTITYが自社ブランドで扱う製品も、こうした生活者のニーズやトレンドの新陳代謝が早いため、顧客の意見をもとに改善を重ねるリーン開発との相性が良いのです。

リーン開発の具体的なプロセスとは?

リーン開発は具体的にどのように進めるのか? IDENTITYでは、以下3つのプロセスに沿って実行しています。

  1. 顧客のリアクションから仮説を立てる
  2. プロトタイプを作って小さく売り、仮説を検証する
  3. 検証結果をもとに、本格的な商品化(事業化)を検討する

ここからは、自社ブランドの一つである「Creaimo(クリーモ)」の看板商品「壺芋ブリュレ」から、リーン開発で商品化した「蜜芋ブリュレ」を例に、各プロセスの詳細を紹介していきます。

壺芋ブリュレを一人でも多くのお客様に届けたくて

​岐阜県・美濃加茂市にてIDENTITYが運営するレンタルスペース『MINGLE』で生まれた壺芋ブリュレは、2020年に店頭販売を始めると、連日完売。口コミが連鎖し、一躍、行列が絶えないほどの人気商品になりました。

2021年からは、全国のお客様に届けたいとEC販売をスタートすると、750本が最短1分で完売。下北沢や名古屋でポップアップ出店も実現し、「話題のお取り寄せスイーツ」として多くのメディアに取り上げていただきました。

その一方で、一本一本、壺にぶら下げ炭火で焼き上げる製法ゆえに、一度に提供できる数に限りがあり、買いたいと思ってくださるお客様に購入いただけない課題も。

「口に含んだ瞬間とろける」特別なさつまいもが生み出す壺芋ブリュレの感動を、より多くのお客様に、より手に取りやすい形でお届けしたい。その思いから、味わいはそのままに提供数を増やすことができる方法はないかと検討を重ねていました。

結果、たどり着いたのが新商品「蜜芋ブリュレ」の開発です。

顧客のリアクションから仮説を立てる

開発にあたり、まず行ったのが「顧客のリアクションから仮説を立てる」ことです。

過去に壺芋ブリュレを購入してくださったお客様からの「壺芋ブリュレは美味しいが、食べ切るには量が多い」「家族とシェアしやすいものだと嬉しい」といった意見を参考に、「壺芋ブリュレを一口サイズにすれば、一口目の感動はそのままに、食べやすく、シェアしやすくなるのでは」という仮説を立てました。

お客様の意見を拾うときには、ブランドが運営するSNSのアンケートやコメント機能を活用したり、場合によってはインタビューすることもあります。

プロトタイプ作って小さく売り、仮説を検証する

仮説を立てたら、次はプロトタイプを期間限定で小さく売り、仮説検証を行います。

プロトタイプを作るときに重要なのは、「『MVP』を定義し、その要件を満たす必要最低限の状態」を目指すことです。

MVPとは、顧客に必要最小限の価値を提供できるプロダクト(Minimum Viable Product)のこと。完璧を目指すわけではありませんが、必要最低限の機能だけを付与した製品・サービスを作るわけでもありません。

顧客が抱える課題を解決でき、その価値を体感できる最低限の状態での提供を目指します。

蜜芋ブリュレにおけるMVPは、「一口サイズでライトに食べられること」「壺芋ブリュレ同様、ブリュレ特有の香ばしさ、シズル感を感じてもらうこと」。これらを「顧客に届ける最低限の価値」と定義し、プロトタイプを作っていきました。

今回は、同時期にSHIBUYA109でポップアップの出店をしていたため、そこで売ることに。

販売する中で、定量・定性の両面から仮説を検証します。店舗に来たお客様にヒアリングしたり、販売数やリピートのお客様がどれほどいたのかを確認。

重要視したのは「壺芋ブリュレを販売していないときに、蜜芋ブリュレがどれだけ売れるのか」ということ。蜜芋ブリュレの商品化のポテンシャルを見極めるため、壺芋ブリュレを販売していない平日に売り出すことにしました。

仮説検証の結果をもとに、本格的な商品化(事業化)を検討

最後は顧客から得られたフィードバックや、販売数やリピート率など定性・定量の結果をもとに、商品化(事業化)を検討します。

ポップアップで蜜芋ブリュレを販売した際、お客様からは「価格もお手頃で、食べやすいサイズ感」や「小腹が空いたときに食べたくなる」といった好感触の意見が得られました。

また、看板商品である壺芋ブリュレのメディア露出が減少した時期には、蜜芋ブリュレが全体の売上をリードするほどに。リピートのお客様も多かったことから、正式な商品化を決定しました。

2022年10月より、店舗・ECともに販売を開始した「蜜芋ブリュレ」。ありがたいことに、お芋が旬のシーズンに販売をスタートできたこともあり、販売開始から1ヶ月半で2,000セット以上を販売。以前にも増して多くのお客様の手にも届くようになり、好調な滑り出しとなりました。

とにかく「小さく売り、ユーザーの意見を得る」

リーン開発において何よりも重要なのは、限定販売などの方法で「商品を小さく売り、ユーザーのフィードバックを得ること」だと、IDENTITYは考えています。

質問内容を精査したアンケートや、時間をかけてヒアリングするユーザーインタビューも、顧客の声を拾う手段として有効ではある一方、バイアスがかかることで、顧客の本音が見えづらいデメリットもあります。

リアルに顧客と会う機会があれば、まずはライトにヒアリングしたり、SNSであれば簡単なアンケート機能を活用したりする……といった形でも、顧客の意見から仮説を立てる分には十分だと、これまでの実践から感じました。

自社ブランドでの経験も参考に、IDENTITYではリアルプロダクトの商品開発に関するご相談にも乗っています。「コストは抑えながら、顧客のニーズに合った商品の開発を検討している」という方は、お気軽にお問い合わせください。