テレビ・雑誌の取材を12件獲得し、話題づくりに成功。マスメディアの性質を捉えたリアルプロダクトのPR戦略とは?

テレビ・雑誌の取材を12件獲得し、話題づくりに成功。マスメディアの性質を捉えたリアルプロダクトのPR戦略とは?
2022.12.16

​自社製品の認知を獲得するため、PRに力を入れたいけれど、どのように戦略を立てればいいかわからない。さまざまなメディアにプレスリリースを送ったが、取り上げてもらえなかった。PRが点でのアクションになってしまい、その後に繋がらない。

事業を運営する企業にとってPRは必要不可欠ですが、抑えるべき前提や戦略の立て方、手法を理解していないとこのような悩みに陥りがちです。では、しっかりと成果を上げるためにはどのようなPR戦略を立て、実行していくことが重要なのでしょうか。

今回は、IDENTITYの自社事業である壺芋ブリュレがSHIBUYA109渋谷店に2022年6月1日〜7月14日の期間限定でオープンした「壺芋ブリュレすとあ」の事例を取り上げます。「壺芋ブリュレすとあ」は、マスメディアを意識したPRの工夫により、出店中にテレビの取材を6件獲得。メインで販売していた「壺芋ブリュレ」の認知を向上させることに成功しました。出店終了後にも、3ヶ月間でテレビや雑誌からの取材が6件入るなど、秋冬シーズンに向けた話題づくりにも繋がっています。

IDENTITYはどのようなPR戦略を立て、「壺芋ブリュレ」の認知を向上させていったのか。その考え方や手法を詳しくお伝えします。

シーズンである秋冬の盛り上がりを生むためには、夏の仕込みが鍵

壺芋ブリュレは、岐阜県・美濃加茂市にてIDENTITYが運営する宿や喫茶店、レンタルスペースなどの機能をもつ複合施設「MINGLE」で生まれた商品です。2020年に「MINGLE」での店頭販売を始め、2021年からはオンラインストアでの販売もスタート。750本が最短1分で完売するなど、人気商品となりました。下北沢や名古屋でポップアップ出店が実現すると、「話題のお取り寄せスイーツ」として多くのメディアに取り上げていただきました。

たくさんのお客様からご好評いただいている「壺芋ブリュレ」が、一年でもっとも注目されるのは、さつまいものシーズンである秋冬。より多くのお客様に知っていただき、食べていただくためにも、さつまいものシーズンが始まる初秋に盛り上がりを生みたいとマスメディアへの掲載を目指しました。

初秋にマスメディアに取り上げてもらうには、まず秋に向けての話題づくりが必要です。テレビや雑誌は、企画から放送・掲載までのスパンが長いため、秋の企画は7〜8月頃に立て始めることが多いです。そのため、秋になってからリリースを出すのでは間に合いません。マスメディアの性質を考え逆算すると、夏に話題を作ることができれば、秋向けの企画を立てる際に想起してもらえる可能性が高まります。

こうした背景から夏の話題づくりの方法を模索している最中に、SHIBUYA109渋谷店さんからポップアップ出店のお声がけをいただきました。出店期間は6〜7月と、まさに理想の時期。夏の時期に壺芋ブリュレを知っていただくいい機会と位置付け、出店を決定しました。

しかし、この段階では場の確保ができただけにすぎません。重要なのは、そのポップアップ出店でいかに盛り上がりを生み、認知に繋げられるか。幸いにも、ポップアップ出店の場所である渋谷は、多くの人が集まる場所であり、メディアに取材に来ていただきやすい場所でもあります。

そこで、魅力的な店舗や商品を提供することはもちろん、マスメディアの性質を考慮して工夫することで、掲載いただきやすい状況を目指しました。

メディアへの提供価値を高める工夫と、マスメディアの性質を捉えたアクション

今回の出店に際し、PR戦略のゴールとして置いたのは、マスメディアへの掲載によって夏の時期に盛り上がりを生み、秋以降のPRに繋げること。そのために重視していたポイントが大きく2つあります。

一つは、メディアへの提供価値を高めること。どんなに魅力的な商品だったとしても、メディア側から「取材する価値がある」と思っていただけなければ、掲載につなげることは難しいです。そのため、ポップアップの店舗設計や出店前のWeb記事の制作といった事前準備にしっかりと時間を割きました。

店舗設計に関しては、テレビや雑誌の撮影がしやすい店を目指しました。ポップアップ出店では内装や什器に大きく手を加えることが難しいケースが多いですが、今回は壺芋ブリュレの特徴でもある壺芋をバーナーで炙る様子がお客さん側から見やすいように、キッチンを囲うように設置されていたすりガラスを一部撤去させてもらいました。炙りの行程が生む「シズル感」は、メディアが重要視する「撮れ高」という意味でも、お客さん自身が写真や動画を撮ってシェアしたくなるという意味でも、大切にしていたポイントです。

また、「壺芋ブリュレ」のようなオンライン販売をメインとした商品は、配送先が自宅になることが多いため、SNSにアップする写真も自宅で撮ることが多くなります。たとえSNSなどで話題になったとしても、マスメディアが取材に行く場がありません。そのため、今回の出店では、撮影に適した、取材に来ていただきやすい空間を作ることが大きな価値になると考えました。

そのほか、自社メディアである「IDENTITY名古屋」で記事を制作。関係性のあるメディアにもお声がけをし、記事を掲載をしていただきました。事前準備としてWeb上での露出を増やすことによって、出店への期待感の醸成を目指しました。

実際のポップアップストアの様子

もう一つは、マスメディアの性質を考慮したPRをすること。メディアへの提供価値を高める工夫を行った結果、「壺芋ブリュレすとあ」はテレビ6件の取材依頼をいただきました。これらの取材それぞれについて、取材からの放送・掲載時期と出店期間を考慮し、スケジュールを設計することが重要です。

「壺芋ブリュレすとあ」の場合は、出店期間が1ヶ月半(6週間)だったので、1〜2週目に取材日時を設定しました。できるだけ早めに取材に来ていただき、2〜3週目頃までにメディア掲載を目指すことで、放送をご覧いただいたお客さんが余裕を持って来店できるようにしたのです。

仮に、取材を出店期間の後半に設定してしまうと、放送後の出店期間が数日しか残っておらず、放送をご覧いただいたお客さんにご来店いただけない可能性があります。特に、昼の情報番組やバラエティ番組などは放送や掲載までに時間がかかることが多いので、取材を受ける際に放送・掲載時期を確認しておくのがおすすめです。

取材から掲載までを円滑に進めるため、事前に広報担当者を決めておくことも重要です。取材には担当者が同席することで、商品の魅力に関する細かいニュアンスをどのメディアにも一定の水準で伝えることができます。

また、メディア関係者の方々と良好な関係を築くことができれば、関係者同士の情報交換がきっかけとなり、同局の他番組の取材も実現する場合も。取材時にメディア側の情報収集の仕方などを聞いておくと、その後のPR戦略の参考にもなります。

 

出店終了後に、秋冬シーズンの話題づくりに繋がるテレビ・雑誌の取材を6件獲得

上記のようなPR戦略を実施したSHIBUYA109渋谷店の「壺芋ブリュレすとあ」はたくさんのお客さんにご来店いただき、無事1ヶ月半の出店が終了しました。

結果として、主に次の3つの成果が得られました。

1.テレビ放送による来店人数・売上の増加
2.顧客との継続的な接点であるLINEやメルマガの登録者数の増加
3.出店をきっかけとした、秋冬シーズンの取材獲得

なかでも、出店終了後にテレビや雑誌から取材依頼が6件あったことは、秋の話題づくりに繋げられたと言えるのではないでしょうか。IDENTITYとしても、今回の出店を通して目に見える数字以上に認知を上げられたのでは、と感じています。

「壺芋ブリュレすとあ」の出店に際して、IDENTITYがPR戦略として重視したのは、メディアへの提供価値を高めることマスメディアの性質を捉えたPRを行うことの大きく二つ。

SHIBUYA109渋谷店さんへの出店という事例から細かいポイントに言及すると、メディアへの提供価値を高めるために店舗設計事前の記事掲載、マスメディアの事情を考慮した取材のスケジュール管理関係者とのコミュニケーションに注力してきました。結果、さつまいものシーズンである秋に向けての話題づくりに繋げることができたと実感しています。

IDENTITYでは、こうした自社ブランド運営の経験や知見をもとに、PR戦略の構築からアクションの実行まで、PRに関するご相談を幅広くお受けしています。「商品やブランドの認知向上のため、戦略的にPRを行っていきたい」という方は、こちらからお気軽にお問い合わせください。