曖昧だった顧客像の理解を深め、見える化。リサーチから導いた“人”中心の販売戦略設計

Client
KOBIRA Corporation
Solution
顧客調査・分析、販売プランの設計
2025.7.28

鹿児島県で110年以上続く、地域商社であるKOBIRA Corporation。展開するエネルギー事業「やさしいエネルギー」は長年、鹿児島県・宮崎県のお客様にLPガスを提供してきました。

同社は、2022年から“第4創業期”と位置付け、ミッション・ビジョンを刷新。これに伴い、新たな理念を体現するサービスづくりに取り組み、他社にはない独自の価値を創出したいという思いを抱いていました。こうした目標を実現するためには、お客様が「本当に求めていること」を深く理解したうえで、今後のサービス展開の方向性を定める必要があるとして、IDENTITYにご相談いただきました。

暮らしに寄り添い、安心して選んでもらえるサービスへ

KOBIRAは、MVVの刷新に伴い、3つの課題の改善が必要だと考えていました。1つ目は、複雑で不透明な料金体系です。業界特有の課金制度により、どれだけ利用すればいくらかかるのか予測しづらい状況でした。そのため、顧客が安心してサービスを選べない状況となっていました。2つ目は、顧客視点の不足です。顧客情報やUXを起点とした設計へと転換し、顧客が本当に求めるものを提供する重要性を感じていました。3つ目は、コミュニケーション設計の不足です。あるべきコミュニケーションの形が明確化できておらず、営業成果が個人の力量に大きく依存する傾向があり、標準化された営業ツールや説明内容の確立が求められていました。

こうした状況の中、KOBIRAは顧客の声に応え、かつ営業担当者が提案しやすい新たな料金プランの構築が必要だと判断。IDENTITYはこれらの課題に対し、顧客理解の精度を高めるべく、顧客リサーチと分析、具体的な販売プラン設計に取り組みました。

6ヶ月間のプロジェクトのうち、鹿児島県にあるKOBIRA本社を訪問したのはキックオフ時のみ。それ以降はオンラインで進行しました。週次で定例ミーティングを開催することで、進捗確認と方向性の調整を徹底し、距離を感じない密な連携体制を構築しました。

感覚的だった顧客理解をインタビューで徹底リサーチ

最初の約1ヶ月間は、リサーチ設計に注力しました。このリサーチは、キックオフ時から既に持っていた「ガス乾燥機が新規顧客獲得の効果的なフックになる」「対象は子育てをする共働き世代」という仮説の検証を目的としていました。この仮説に基づき、リサーチにおける具体的な方針を決定したあと、手法を選定。仮説に合致する顧客へのインタビューを計画しました。

インタビューは約2ヶ月ほどかけて行いました。該当世帯を対象に、深い理解を得るためのデプスインタビューを実施。ここでは一問一答形式ではなく、会話の自然な流れの中で感情変化や意思決定の背景を探る半構造化インタビュー手法を採用しました。

顧客行動の分析と可視化で導入障壁の解決策を発見

インタビュー後は、分析を行い、顧客の本音やニーズなど重要な示唆を抽出しました。この過程で当初の仮説通り、ガス乾燥機の有効性が確認できただけでなく、顧客の潜在的なニーズやサービスの認知経路、ガス乾燥機を導入するにあたっての心理的・経済的障壁といった仮説を裏付ける複数の事実を確認できました。さらに明らかになったこととして、「ガス乾燥機は一度導入すると手放すことがない」という導入後の高い満足度と継続利用の現状がわかりました。

その後、得られたインサイトをもとにコアの顧客像を描き、カスタマージャーニーマップを約1ヶ月ほどかけて作成。「課題の発生」から「購入」、「他者へ共有」に至るまでの顧客行動をプロセスごとに分け整理しました。また、各段階での離脱ポイントやタッチポイント、提供すべき解決策を可視化し、どのような障壁に直面しているかを明確にしました。

インタビューとカスタマージャーニーマップにより、最終的には「初期導入のハードルを下げる戦略が最も効果的である」という結論に至りました。

心理的ハードルを解消する新プラン策定。キャンペーンリリースまでサポート

結論を受けて、認知・検討フェーズにおける課題を解決するべく、約1ヶ月ほどかけて顧客の導入障壁をさげる新たな料金プランを検討しました。このプランでは初期費用の負担を抑え、ランニングコストの最適化を図り、顧客の心理的・経済的負担を軽減。従来の複雑な料金体系をシンプルでわかりやすいものに改善。また、提供価値を明確にするといった視点を軸に、営業担当者が提案しやすいプラン内容であることも意識しつつ整理を行いました。

合わせて、プロモーション用のポスティングチラシ制作においても訴求内容とデザインの最適化を検討。今後の料金体系の再作成やプロモーションにおける指針の策定に伴走しました。

本プロジェクトを通して、将来的な構想として「新たな顧客接点となる施設の設置構想」といった中長期的アイデアも生まれました。KOBIRAからは「これまで感覚値でしかなかった顧客像の仮説をエビデンスに基づいて体系化し、全社に共有できる形にできた。また顧客視点に立った価格プランを設計ができた」と評価いただきました。

POINT

  1. 顧客ニーズの可視化
  2. リサーチに基づく戦略的販売プランの設計
  3. 営業提案の標準化