「攻め」の第一歩を後押し、新たな事業の柱を。若手社員による商品開発プロジェクトを伴走

Client
株式会社ヤマサン
Solution
新規事業開発
2025.12.2

愛知県豊橋市で300年続く穀物問屋を営むヤマサンは、「攻めと守りの経営改革」を掲げ、後継者主導で経営基盤の強化を進めています。しかし、「攻め」にあたる新規事業創出において、方向性が絞り込めないという課題を抱えていました。

 IDENTITYはこの課題解決に向けて1年半にわたる伴走支援を実施。事業領域の探索からはじめ、最終的には、大豆を活用したプライベートブランドのレトルト食品開発を実現し、新規事業にチャレンジする組織文化を醸成しました。

新規事業の方向性と挑戦に踏み出しづらい環境が課題

ヤマサンは1703年に油問屋として創業しました。現在は米・大豆・油などの穀物卸、飼料販売、愛知県と静岡県での飲食店運営を手がけ、食の総合商社として地域に根ざして活動しています。2023年1月に後継者が経営に参画してからは、DX推進で業務効率化や財務基盤の安定化を図り、「守り」の改革は少しずつ成果を上げています。

しかし、将来の持続的成長に向けた「攻め」の改革については二つの大きな壁に直面していました。一つは複数の事業領域を持つがゆえに、「どの領域で、なにをするのか」と焦点を絞りきれずにいること。もう一つは300年にわたって卸売業を中心に発展してきたため、リスクをとって新規事業にチャレンジするという風土自体がなかったことです。

このような内部課題を抱える中、外部環境も大きく変化していました。豆腐の中小メーカーの倒産・廃業が急増し、主力商品である大豆の卸先が減少。早急に新規事業の軸を定め、社員を巻き込みながら事業開発に挑戦する文化をインストールすることが求められていました。

「どの山に登るのか」の探索から、若手社員主導の商品開発をサポート

この状況を踏まえIDENTITYはまず、「どの山に登るべきか」を明確にするべく、社員へのインタビューから着手します。大口取引先の営業担当者から飲食事業担当者まで、様々な部署・年代の社員に、自社の強みや取引先のニーズをヒアリング。これらの調査結果と大豆の新たな販路開拓の必要性を総合的に検討し、「大豆を活用したプライベートブランドのレトルト食品開発」と具体的な方向性を定めます。

 食品開発においてはヤマサンの希望により若手社員を巻き込んだ体制構築を進めました。今回、白羽の矢が立ったのは管理栄養士資格を持つ、入社3年目の女性社員2名でした。

 そこでIDENTITYは、彼女たちが事業開発の経験を積めるよう、アドバイザーという立ち位置から支援することに。企画から商品化まで、基本的には彼女たちが主体となって進め、必要に応じて各工程でノウハウを提供するというプロセスを設計しました。

 まず商品企画の段階では、リサーチ結果や競合調査をもとにアイディエーションを実施し、商品の方向性を検討。自社が運営する米屋の店頭で200人へのアンケートを行い、商品コンセプトの妥当性を検証しました。次に商品化の段階では、レシピ制作やOEMの選定からはじまり、工場と試作のやりとり、パッケージに使用する写真撮影にも同席するなど、食品開発に必要なプロセスを一つひとつ経験していただきました。

スモールスタートで実現した、新規事業開発への第一歩

約1年半のプロジェクトを経て完成したのは、「まるごと大豆と野菜のポークカレー」と「まるごと大豆と赤味噌の特製ボロネーゼ」の2商品です。どちらも国産大豆を使用し、「1日分の野菜の1/3が摂れる」という栄養価値を打ち出し、レトルトでも罪悪感がなく、忙しい中でも手軽に食べられる商品となりました。今後は地元スーパーで展開予定です。

本プロジェクトで重視したのは、大きな成功を狙うのではなく、新規事業開発の土壌を作ることです。そのため、「小さくはじめること」を意識し、既存の販路や自社のリソースを活用し、無理のない形で立ち上げられるように事業を構築しました。

IDENTITYは今後も、地域に根ざしたヤマサンの挑戦をサポートし、共に新たな価値創造に取り組んでいきます。

POINT

  1. 社員インタビューを実施し、事業の方向性を明確化
  2. 若手社員が実践を通じて事業開発スキルを習得し、自走できる組織力を構築
  3. 既存販路・自社リソースを活用したスモールスタートで低コスト・短期間での事業化